土曜の夜。暖簾の外まで湯気と醤油の匂い。店の前には折り返しの行列。
私はレジ横でテーブルの空きを数えながら、券売機の補充をしていました。厨房からは鍋の音、ホールでは焦げ目を気にする店長の声。忙しいとき特有の、少しだけ張り詰めた空気。
そのとき、入口近くで英語が早口で聞こえてきました。欧米人らしいカップル。背の高い男性が腕時計をタップして、女性はトレーの丼を指さしています。
「Order is different」 「Too spicy」 「We don’t have time」
視線が私に集まった瞬間、心臓がドクンと跳ねるのがわかります。
英語は得意じゃない。「どうしよう」「誰かを呼ぶ?」目の前がぐるぐる回る。
手元のレシートが少し震えて、指が思うように動きません。言い返して間違えたら、もっと怒らせてしまうかもしれない。店長を呼ぶ? それとも私が対応する?
迷っているうちに、男性の声が半音上がりました。周りのお客様も様子をうかがっているのが分かります。ここでモタモタすると、店全体の空気が悪くなる。
…私がやるしかない。
深呼吸をひとつ。ポケットのメモに指先が触れます。
「最初は短く」「ゆっくり」「すぐに動く」——研修で何度も練習した、あの順番。
私はトレーの高さまで体を下げ、目線を合わせて、はっきりと口を開きました。
「アイムソーリー」
「アイル チェック。ウェイト トゥーミニッツ。」指で“2”を示します。
「OK」お客様も話が通じたと感じたのか、声のトーンが落ち着いています。
私は伝票を持って急ぎ厨房へ。
「店長!」
店長と一緒に注文内容、テーブル番号、伝票の内容を一気に追いかける。作り直しが必要か、代替の丼なら何分で出せるか?段取りを組みなおし、お客様の元へ戻って説明します。
必要なのは完璧な言葉より、順番と態度。
どう言えばトラブルにせず、お客様から「助かった、ありがとう」の言葉を引き出すことができるか。
今回は、そのための超かんたん台本をお伝えします。
Sorry → Check → Fix
英語を完璧にする必要はありません。受け止め→確認→処置の順番を守って伝えるだけで、空気は落ち着きます。
受け止め
I’m sorry.(アイム ソーリー)
申し訳ございません
確認
One moment, please. Let me check.
(ワン モーメント プリーズ。レットミー チェック)
少々お待ちください、確認いたします
対応
I’ll fix it now.(アイル フィクス イット ナウ)
今、作り直しています
Replacement or refund?(リプレイスメント オア リファンド?)
替えの商品をお持ちしますか?返金をご希望ですか?
6つだけ、基礎フレーズ
I’m sorry.(アイム ソーリー)=まず謝る
One moment, please.(ワン モーメント プリーズ)=少しお待ちを
Let me check.(レットミー チェック)=今すぐ確認します
I’ll be back in 2 minutes.(アイル ビー バック イン トゥー ミニッツ)=2分で戻ります
I’ll fix it now.(アイル フィクス イット ナウ)=今、対応します
Replacement or refund?(リプレイスメント オア リファンド)=交換か返金か
大事なことは目線と態度
・落ち着いた声で
・目線を合わせる
・一歩前へ
・わかりやすく、指で“2”と示す、またはメモに「2 min」と書いて見せる
・締めは感謝で終わる
外国のお客様 だからと言って、多くのことを覚えたり、特別なことをする必要はありません。基本的には日本のお客様と同じ対応で良いのです。
違いは「相手の国のあたりまえ」や「表現方法」にあります。それを学んで誠意を持って対応するのが大切です。
ウェルネシーでは言葉だけではなく、英語が苦手だけれど外国の方を相手にしなければならない皆様に対し、優しいサービスを提供しています。気になる方は是非お気軽にお問い合わせください。